生命は力強く、そして繊細に

山中湖からみる富士山の悠然と煌めく姿は、日本の誇りである。四季折々の表情があり、毎シーズン観光客で賑わう一方で、富士の一端に魅了され、人生のすべてを捧げる人もいる。


今回は、早朝より登山道から一歩逸れて樹海の奥深くへ踏み込む。木々の合間からは時折日光が差し込み、朝霧に反射した光が足元を覆っている苔やシダ類を優しく照らしていた。歩みを進めると、口を大きく開けた溶岩洞窟や不規則な迷路のように広がる大木の根が、私の足取りを重くした。富士の樹海には、神秘的な面と謎めいた面の両面が両立しており、次第に時間や場所の感覚を鈍くする。


虫や鳥の協奏曲が聞こえる。ふと、この瞬間。いつの間にか私自身が自然に溶け込んだことを認識した。木や苔にある自然本来の淀み・くすみなどの繊細な香りまで、感じることができるようになり、それが妙に落ち着くことに気がついた。


荘厳な自然からすると、私は たわいのない 存在である。その現実が、今は何故か安心するものだった。


初めて、なにものでもない自分を受け入れた。